しまった種は、乾いていく
なぜ、貯金だけではダメなのか
「資産形成、何から始めればいい?」
その質問に、これまで剪定の話(減らす)と、種銭の話(貯める)を書いてきました。でも、そのもっと手前に、いちばん大事な話が残っていました。
そもそも、なぜ投資が必要なのか。
今日は、この「そもそも」に立ち返って、「なぜ、貯金だけではダメなのか」を、お金の専門家として、そして3人を育てる親として、できるだけやさしく書いてみます。
なぜ、日本人はこんなに投資をしないのか
最初に、ずっと不思議に思っていたことから。
日本人は、世界的に見ても、投資をする人がとても少ない国です。なぜでしょう。
私の答えは、シンプルです。教えてもらう機会が、なかったから。
学校で習わない。教えてくれる大人が、まわりにいない。そして何より、親がしていないから。お金の話は「いやらしいもの」とされて、家庭でも避けられてきました。
正直に告白します。私が株式投資を始められたのは、たまたま、親が「投資でお金を育てる」という世界を見せてくれる環境にいたからです。もし身近に投資をしている人が一人もいなかったら、私も、やっていなかったかもしれません。
これは、運でした。
でも、運で終わらせたくないんです。だから私は、自分の子どもたちには教えるつもりです。そして、この楽屋裏が、読んでくださっているあなたにとっての「投資の話をしてくれる身近な人」の一人になれたら、と思っています。
貯金は、静かに目減りしている
「でも、貯金しておけば安心でしょう?」
かつては、それで正解でした。でも今は、少し事情が違います。
世界的に、インフレ(物価が上がること)が続いています。物の値段が上がるということは、裏を返せば、お金の価値が下がっているということ。銀行に100万円を置いておいても、その100万円で買えるものは、年々少しずつ減っていく。
引き出しに大事にしまった種が、まかれないまま、少しずつ乾いていくのに似ています。数は減っていない。でも、芽を出す力は、静かに弱っていく。
ここで、いちばんお伝えしたいことを。
資産形成のための投資は、「攻め」ではありません。「守り」です。
一発当てて増やすこと、ではない。インフレから、自分の資産を守ること。これが、投資の本当の役割です。「自分の資産を、自分で守る方法を学ぶ」。これは社会人にとって、もしかしたら最重要の課題かもしれない、と私は思っています。
働ける時間には、上限がある
もうひとつ、考えておきたいことがあります。
働いてお金を得ること、労働所得は、とても尊いものです。でも、ひとつだけ、どうにもならない壁がある。
1日は、24時間しかありません。
どれだけがんばっても、働ける時間には上限がある。だから労働所得には、おのずと天井があるんです。
そこで大事になるのが、労働所得に加えて、「お金にも働いてもらう仕組み」を、早くから少しずつ育てておくこと。木を植えておけば、自分が眠っているあいだも、木は育ちます。
この流れは、これから加速するとも言われています。AIが人間の能力を超える、いわゆる「シンギュラリティ」が起きれば、世の中の変化も、インフレのスピードも、さらに速まる可能性が囁かれている。未来は誰にも断言できません。でも、「労働所得だけに頼り続けるのは、少し心もとないかもしれない」。そう考えておくこと自体に、意味があると思っています。
だからこそ、誰かと話してみてください
ここまで読んで、「分かってはいるけど、それどころじゃない」と感じた方も多いはずです。
その気持ち、痛いほど分かります。日々の仕事や暮らしに追われて、お金のことは、難しくて、得意でもないから、どうしても後回しになる。
でも、だからこそ、あえてお願いしたいんです。お金の話を、誰かと、声に出して話してみてください。
夫婦でも、家族でも、信頼できる友人でもいい。お金のことは、一人で考えていると、必ず煮詰まります。声に出して話すと、ぼんやりしていた不安や優先順位が、少しずつ現像されて、輪郭を持ちはじめる。前に書いた「人と話すことで、自分の頭の中が見えてくる」は、お金でも、まったく同じなんです。
そうやって、漠然とした不安が少しずつ消えていくと、不思議なことが起きます。心に、余白が生まれる。その余白で、家族との時間に、もっと力を注げる。新しい挑戦に、手が伸びる。
少し余談ですが。学校の勉強、とくに暗記詰め込み型の受験教育には、お金の授業がほとんどありません。年号や公式は覚えるのに、生きていくのに毎日使う「お金」は、教わらないまま大人になる。私は、詰め込みの知識よりも、お金の教育のほうがずっと大切だと思っています。だからこそ、学校が教えてくれないなら、家庭の食卓で。子どもにこそ、お金の話を。
そして、渡す側になりませんか
最後に、いちばん伝えたいことを。
冒頭で、告白しました。私が投資を始められたのは、親がその世界を見せてくれたから。運だった、と。
もしあなたが、すでに何かを始めているなら。あるいは、今日ここで「なぜ必要か」を知ったなら。今度は、あなたがその運を、誰かに渡す番なのかもしれません。
お子さんに。お孫さんに。まわりの、まだ始めていない誰かに。「お金の話をしてくれる身近な人」が一人いるかどうかで、その人の人生は、静かに変わります。学校が教えてくれないなら、私たちが、教えてくれる大人になればいい。
大げさな講義は、いりません。食卓で、散歩の途中で、「うちはこう考えてるよ」と話す。それだけで、種は、次の手に渡っていきます。
完璧に理解してから、じゃなくていい。 まずは「なぜ投資が必要なのか」を、知った。今日は、それで十分です。
種は、しまっておくと乾いていく。 だから、まく準備を。そして、いつか誰かに、渡す準備を。
みなさんは、お金のことを、ちゃんと習った記憶、ありますか? そして、誰かに話したことは、ありますか?
今日も、楽屋裏から。
ちっくん
※本記事はわが家の一例の共有であり、特定の投資や金融商品を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。最終判断はご自身の責任でお願いします。


